『レオン』とその仲間たち【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」28冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」28冊目
初めて「ちょい不良」「ちょいモテ」が登場したのがいつか調べようと思ったら、国会図書館には2006年1月号以降しか所蔵がなかった(きちんと納本してください)。なので、手元にある数冊のバックナンバーのみに基づく話になるが、2003年11月号の特集がまさに「モテるちょい『不良(ワル)』オヤジの作り方」だった。
創刊2周年記念号ということで、特厚の360ページ。値段は創刊号と変わらず780円だ。表紙は、ド派手な蛍光ピンクの文字にサングラスをかけたジローラモのドアップ。サングラスにはヒョウ柄のコート(プラダ/79万2000円)をまとったニキータが映り込んでいる。
見るからに勢いを感じる表紙で、誌面もイケイケ。エルメスのスカーフをニキータとのプレイ時の「目隠しにピッタリ!」と紹介したかと思えば、ボディオイルは「ふたりでヌリヌリしてトロトロしてくださいな」ときた。「『ちょいキザ』オヤジ必携!プラピが作ったピカりんカフス」「ちょい『不良』オヤジはジャケットもバックシャン!!」「オヤジの名刺入れ ちょい派手レザーで超薄型!」「『ちょい枯れ』+『ちょいキザ』なこの秋の最強ジャケット」「ちょい『不良』オヤジは1泊2日のデートも下心をオシャレに演出」「『イキすぎない』のがキモ! ちょいモードなオヤジミリタリー」と、見出しのリリックもキレまくりだ。

奇しくも伊勢丹メンズ館がオープン(「男の新館」からリニューアル)したのが、この創刊2周年記念号発売2週間前の2003年9月10日だった。おそらくこのあたりから人気に火がついたのだろう、2004年から2005年にかけて『レオン』の好調と男性ファッション市場の活性化を報じる記事がいくつも出た。
そのひとつ、東京新聞2004年10月2日付夕刊によれば、同誌2004年11月号(創刊3周年記念号)は発行部数7万部(当時としてはさほど多い数字ではない)に対して広告収入3億円で男性誌新記録を樹立。誌面で紹介されたスーツやバッグ、時計が飛ぶように売れ、“完売御礼”が続出したという。
同記事には岸田氏のコメントもあり、「LEONには生き方とか教条主義的な話は一切無い。可処分所得があればかなえられる話ばかり。要は“モテるオヤジの作り方”がすべて。外見のね。内面を磨くのは読み捨ての雑誌でできることじゃないです」「老舗旅館やヘミングウェーを語っても広告には結びつかない」「ビジネスとして戦略的にやってます」と、実に身もフタもない割り切りを語る。
岸田氏は2024年9月14日開催の第22回毎日ファッション大賞贈賞式のトークイベントにも登壇。鳥越俊太郎(ジャーナリスト)、大西洋(伊勢丹営業本部MD統括部紳士統括部長)、西川恵(毎日新聞専門編集委員)と「なぜいま男たちのファッションか」のテーマで語り合った。さらに2005年5月8日放送の『情熱大陸』に出演。「ちょいモテオヤジ」が同年の新語・流行語大賞トップテンに入り、翌2006年には『笑っていいとも!』に「ちょい不良オヤジコンテスト」コーナーができた。これをブームと言わずしてなんと言おう。

